サウンド部の仕事とは?あらゆる「音」でユーザーの最高な体験を演出する【サイゲームス仕事百科】
「サウンド部」は、ゲーム内で流れるBGMや歌唱曲・SE・環境音・キャラクターボイスに加え、アニメコンテンツ、プロモーションビデオやイベントで流れる楽曲など、サイゲームスが展開するコンテンツのあらゆるサウンド制作に関わる部署です。サウンドは、ゲームの世界観を演出し、物語への没入感を高める重要な要素です。今回はこのサウンド部の多岐にわたる仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。
▼最高のユーザー体験を演出するプロフェッショナルが集まる「サウンド部」
▼サウンド部の体制と主な仕事内容
▼サウンド部の業務フロー
▼求められるスキル・マインド
▼仕事のやりがいとは?
▼サウンド部のキャリアについて
▼サウンド部を目指す人へのアドバイス
最高のユーザー体験を演出する
プロフェッショナルが集まる「サウンド部」
みなさんは「ゲームのサウンド」と聞くと何を思い浮かべますか?
すぐに思いつくものは戦闘中に流れるBGMやキャラクターの歌唱曲かもしれません。しかし実際のゲームでは、それら「楽曲」だけでなく、ゲーム内のサウンドエフェクト(以下、SE)・キャラクターボイス・環境音・実況音声など、非常に多くの音がキャラクターの動きやユーザーの操作に合わせて流れ、ゲームを演出しています。
※ サウンドエフェクト……銃撃音、打撃音、道路で車が走る音、動物の鳴き声、風の音、ユーザーが画面をタップしたときの音など、ゲームの演出として付け加えられるあらゆる音のこと
ゲームに関するサウンド部の作業は、大まかに以下の4つに分けることができます。
- 楽曲制作
- SE制作
- 音声関連業務
- アセット(各種素材データ)の仕様作成、ならびにゲームへの組み込み
これらに加えて、ゲーム外のプロモーション、オフラインイベントのサウンド制作・調整作業、サウンドトラック制作やTVアニメのサウンド制作なども関わっています。
サウンド部の体制と主な仕事内容
元々はサウンド部ではなく、「サウンドチーム」という1つのチームでした。ただ、ユーザーのみなさんにとっての「最高の体験」を突き詰めていくうちに求められる技術が増えていき、「サウンド部」として担当範囲を細分化していきました。
現在は大きく「ミュージックチーム」「サウンドデザインチーム」「サウンドアドミニストレーター」「Foley室」「音響研究室」の5つに分かれており、すべてを合わせると80名強のスタッフが在籍しています。
ここからは各チームの業務概要を説明し、チーム内の役職をいくつかピックアップして紹介します。
■ミュージックチーム
歌唱曲の作詞・作曲や、BGM・アニメ劇伴、オフラインイベントのサウンド制作・調整作業などの楽曲を制作しているチームです。ゲームタイトルやコンテンツによって作り方が異なるため、さまざまなジャンルのプロフェッショナルが集結しています。特に最近はコンシューマーだけでなくモバイルゲームでも、シナリオやセリフに合わせて曲が盛り上がるタイミングを合わせたり、カットシーンの雰囲気や演技や演出のタイミングに合わせて楽曲を作成する「フィルムスコアリング」という作曲手法が使われたりと、通常の音楽制作から一歩踏み込んだ楽曲制作の技術を使用することが増えてきました。
<役職の主な例>
・音楽制作ディレクター(歌唱曲)
歌をレコーディングする際のディレクションをはじめ、歌唱指導、トラックダウンやマスタリングのディレクションなどを行います。また、実際のライブ会場では音響の監修も行います。
・作編曲
作曲・編曲はもちろん、楽器のレコーディングや、トラックダウン、サウンドトラックのマスタリングのディレクション、業務委託先への発注から検収までを行います。ゲーム内の楽曲だけでなく、アニメの劇伴や歌唱曲など、コンテンツの個性に合わせ、求められる技術・スキルも大きく変わります。
・ミュージックインプリメンター
「インプリメンター」とは、制作物をゲームの中に実装させる技術職のことです。ミュージックチームでは、音楽に関連する制作物(アセット)を作中に組み込む実装作業を担いますが、クリエイティブな業務の一環として、普段はアニメ音響監督が行うような選曲作業も担当し、台本やカットを見ながら場面に合った音楽をセレクトして映像に当てていく業務も担っています。
・音楽制作進行
社内外の楽曲制作の進行管理や、さまざまな現場のクリエイティブサポートを務めます。ミュージックアシスタントプロデューサーを兼務しているスタッフもいます。
上記のように細分化されたスペシャリストたちが、必要なスキルに応じて『プリンセスコネクト!Re:Dive』『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』などのゲームタイトルにアサインされます。職務を兼ねることは多くはありませんが、ゲームタイトルは複数受け持つこともあります。
■サウンドデザインチーム
SEや音声など、楽曲(ミュージック)を除くすべてのサウンド制作を担当しているチームです。SEの1つをとっても、攻撃のときに鳴る剣や銃などの効果音や、UIのボタンに触れたときの効果音、サラウンドで周囲の様子を伝える環境音など、サウンドによって制作方法もさまざまです。時にミュージックチームと連携を取りながら、サウンドのゲームへの組み込み、鳴らす仕組み作りの設計・開発なども行います。
<役職の主な例>
・サウンドデザイナー
ゲーム内の効果音制作を中心に、音演出・声演出・ゲーム内ミックスまで含めた、ゲーム全体のサウンドデザインや実装を行います。また、ゲーム内だけでなく、プロモーションやマルチメディア展開に関する音のデザインやミックスなども幅広く担当します。
・テクニカルサウンドデザイナー
エンジニア(プログラム)とサウンドデザイナーの境界領域を受け持つ職種です。サウンドデザイナーの中でも、よりプログラミングや音響処理の知識を用いてゲームオーディオの実装方法を設計する役割を担います。
・ボイスエディター
収録の現場で録音された音声が納品された後、ゲームに組み込む前に音声の整音や加工を施し、ゲーム実装までの工程を担当します。キャラクターの魅力を最大限に引き出すために、性格や感情、状況など、さまざまな要因を考慮した上で最適な音響処理を行います。また大量の音声ファイルを取り扱うために緻密で丁寧な業務への取り組みが求められます。
・サウンドエンジニア
主にスタジオの機材を取り扱い、音声・音響関連のレコーディングやMA(※)のミキシングを行う職種です。同じ「エンジニア」といっても、ゲームやホームページの開発・設計を行うエンジニアとは基本的に性質の異なる業務です。また、大阪サイゲームスにあるフォーリースタジオなどを管理しているエンジニアも含まれます。
※ MA……「マルチ(トラック)オーディオ」の略。アニメなどの映像に音声や効果音などのサウンドを追加したり、不要なノイズを排除して整えたりする作業の総称
■Foley室
ゲームや映像作品などさまざまなコンテンツにおけるフォーリーサウンドを担当する組織です。
フォーリーとは足音や衣擦れなどの人物動作音やドアや物の落下音などを、映像を再生させながら収録するサウンドデザインの手法です。収録担当者は、ただ映像に合わせて音を収録するのではなく、世界観やキャラクターの感情に寄り添って演技するためフォーリーアーティストと呼ばれています。またフォーリーミキサーやスタジオ運営エンジニアなどのスペシャリストたちと連携してコンテンツ制作に携わります。
■音響研究室
音響・信号処理の分野において、世界をリードする先端的な研究開発を通じ新技術の創出を担う組織です。サウンド部全体と密接な連携を促進することで、ゲーム開発現場における課題の解決や開発設計の品質、効率向上に取り組みます。また音響研究室では定期的な技術交流を通じて信号処理のスペシャリスト、サウンド実装を担うゲーム開発エンジニア(プログラム)、テクニカルサウンドデザイナーなどさまざまな職種のナレッジ共有も推進しています。
■サウンドアドミニストレーター
サウンド部全体のハードウェア機材やソフトウェアツール、PC全般に関するサポートを担当するチームです。サウンド関連のソフトウェアは昔からダウンロード販売が多く、海外とやり取りをしてライセンスを受ける必要があるものもあります。そういった少々特殊なサウンド機材の専門家として管理を行う他、機材の選定・発注・管理から各種テクニカルサポートまで、幅広い業務に携わります。
サウンド部の業務フロー
次に業務の一例として、サウンドデザインチームからサウンドエフェクト制作の業務フローを紹介します。なお、前述のとおり、サウンド部は「音」にまつわるさまざまな専門職が集まった部署なので、業務フローも職種や内容によって大きく異なります。ここで紹介するフローはあくまで1つの例となりますのでご了承ください。
1.受注・打ち合わせ
ゲームの開発チームからSE制作の発注を受けます。依頼の企画内容を理解し、プランナーと打ち合わせをして、どんな効果音が良いのか、どんな演出が求められているのかを綿密に擦り合わせます。音は目に見えない、かつ、言葉でも表現しづらいものなので、この段階でゴールを明確にし、精度の高いサウンドデザインの設計をすることが重要です。
2.アセット制作・チェック
サウンドデザインのコンセプトが決まったら、アセット(ゲームに組み込む素材)制作に移ります。必要に応じてライブラリー音源での素材収集、スタジオやロケでの収録、シンセサイザーなどでの作成を行った後、音をクリアにする「ノイズ除去」、複数の素材を組み合わせる「ミックスダウン(ミックス、ミキシング、トラックダウンとも)」をしてSEのアセットを作成します。音は聞こえる環境によっても大きさや表情が異なるため、実際の環境で何度も音を鳴らして確認し、根気強く理想のSEを制作します。
3.ゲーム内への組み込み・デバッグ
チェックが完了したら、実際にゲームで音が鳴るよう、アセットを組み込みます。チェック時は正常に聞こえていた音も、実際のゲーム機から流れると聞こえ方が変わったり、音量バランスが崩れたりするので、適切に鳴るかのデバッグと合わせて、細かく調整します。
4.テスト・調整・リリース
この段階で各種SEと音声、楽曲なども実装されるため、全体的なバランスも含め微調整を繰り返します。以上の工程を経て、演出通りにSEが鳴るようになったらリリースとなります。
1でゴールを明確にすることと重なりますが、SE制作・楽曲制作のいずれにも共通する大事な意識として、「相手の発言にどんな意図があるのか、相手の立場になって考えてみる」というものがあります。依頼主の言ったとおりに音を作ることも重要ですが、そのオーダーの中に「言葉になっていないオーダー」を見つけ、演出として最高のものになるように音を制作します。
例えば、『ウマ娘』のレースシーンは、物理的にシミュレートされた空間で観客の歓声やゲート音などが鳴る設定になっています。音を立体的に鳴らしたいだけであれば、正しい音量・正しい位置で鳴らせば問題ありません。しかし演出として盛り上げるため、実際のゲームでは、カメラが引いた際の観客の歓声をわざと大きく入れています。これは「正しさ」よりも「らしさ」と演出効果を選択したサウンドデザインです。このように、「ユーザー体験をどう設計するか」という点まで考えたサウンド制作をすることが求められています。
サウンド部のスタッフに
必要なスキルとマインド
最高のコンテンツを目指すため、サウンド部では「最高のサウンドを作る」を掲げています。1人でも多くのユーザーのみなさんに最高だと認められるサウンドを作るため、各種プロフェッショナルが知識を持ち寄って制作にあたっています。そんなサウンド部のスタッフに必要なスキルやマインドは、下記のとおりです。
■ユーザー視点を忘れない
「最高のコンテンツ作り」を目標にした際、間違えてはいけないのは「誰にとっての最高か」です。クリエイターあるあるですが、サウンドクリエイターも自己満足的な「自分だけの史上最高」のものを作りたがる性質があります。もちろん自分の中で最高の音を作ることはとても大切なことですが、ユーザーのみなさんが最高に喜んでいただくことがベストです。自分にとってではなく、誰よりも「ユーザーのみなさんにとっての最高を目指す」という優先順位を忘れないようにしています。
■お互いをリスペクトする
サウンド部にはたくさんの職務がありますが、それぞれの職務は流動的なこともあり、上下関係は関係ないような、フラットで風通しのよい職場を目指しています。自分の優位性を示すような行動は慎み、社内のスタッフにもパートナー企業にも、いつでもリスペクトの気持ちを忘れないようにしています。
■活発に意見交換をする
サウンド部では、上記のようにお互いをリスペクトした上で、スタッフ同士が対等に意見を交換することが良いサウンド作りに繋がると考えています。良いサウンド作りのためならばどんな意見もウェルカムという意識を全員が持ち、話しやすく、助け合いながら積極的に挑戦できる組織を醸成しています。
サウンド部のやりがいとは?
ゲームにおけるサウンド制作は、UIの自由度やゲームの発展に応じて、ゲーム全体のコンテンツと高い相乗効果を生む分野です。楽曲やSEの表現を通して、ユーザーのみなさんのプレイ体験そのものをドラマチックに演出しているといえます。
やりがいとしては、やはり自分の作ったサウンドや楽曲がゲームに実装され、その効果で想像以上の方々から反応が返ってきたときや、好きだという声をいただくことに勝るものはありません。また、ライブで直接お客さまの熱気を感じたときも、自身の悩みや生みの苦労が報われたような、強い喜びを感じます。
サウンド部のキャリアについて
現在サウンド部には各職種のスペシャリストが集結しているため、中途採用の場合は異業界からの転入が増えています。といってもサウンドに全く関わっていなかったという人は少なく、特にサウンドデザインチームには映画業界やテレビ業界にいたスタッフ、劇場の音響を務めていたスタッフなどが在籍しています。
また、ここ数年、新卒者・第二新卒者はサウンドデザインチーム・ミュージックチーム共に約3名ずつ入社しています。これまで専門職が多いという話をしていたのでハードルが高く感じられるかもしれませんが、新卒・第二新卒スタッフには一人ひとりのスキルやパーソナリティーに合わせて教育を行っています。そのため、サウンド部として一人前と言えるまで成長できるスピードも人それぞれにはなるものの、希望すればいろんなことにチャレンジでき、かつ粘り強く成長をサポートする体制が整っています。
キャリアとしてはスペシャリスト・ディレクター・プロデューサー・マネジメントの4方向へ成長することができますが、新卒・第二新卒者は「入ったらどんなキャリアを積むのか」「マネジメントをいつかすることになるのか」などで不安になることもあると思います。サウンド部で実際にさまざまな経験を試して、本人でも考えていなかった業務が向いていたということもあるので、どうか悩みすぎず、自分がやりたいことを叶えたいという想いで応募していただければうれしいです。
なお、業務の専門化が進むにつれて、全体的な進行状況を見られる方やアドミニストレーターがニーズに対して足りなくなってきているので、サポート部門はすぐに現場で活躍できるような、経験のある方をお待ちしています。
サウンド部を
目指す人へのアドバイス
サイゲームスのサウンド部は、やりたいと声を上げたら、年齢、経験に関わらず誰でも挑戦できる風土が整っています。また、最新の機材や技術も希望すればいち早く導入できるので、先鋭化したサウンド制作にもチャレンジできます。
採用面接では、「音楽に限らず、10年後、どういう人になっていますか?また、なりたいと思いますか?」という質問をすることがあります。これは目標が知りたいという面よりも、「自分の考えを持っているか」や、それを言語化して表現する能力、そして基本的なコミュニケーション力を見るために聞いています。もちろん中途採用の場合は経験に応じたスキルを持っているかを見ていますが、大事なのはゲームやサウンドが好きだという想いと、何でも挑戦してみようという柔軟性です。
ゲームを通して「最高のサウンド」をより多くの方に届けたい、そんな気持ちを持った方に来てほしいと考えています。
以上、サウンド部の仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。
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