3DCGアニメーターの成長はまさに“鰻のタレ”作り 長期目標を立てて成長の活力に!

サイゲームスには、新卒・第二新卒のスタッフにキャリア形成および生活全般のさまざまな悩み相談を行うメンターと業務上必要なスキルを教えるトレーナーが付くメンタートレーナー制度があります。その対象者に、それぞれのコンビで対談していただく連載企画「SJ対談」。
先輩(Senior)と後輩(Junior)、それぞれの立場から見た制度期間中の思い出や成長の軌跡などを話します。
第10回は、3DCGアーティストチームのSJ対談をお届けします。

トレーナーマサカズ
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ゲームアニメーターとして、さまざまなコンシューマーゲーム製作を経て2017年に入社。入社後はハイエンドゲームをはじめ、新規ゲームタイトルの開発に携わる。
2018年度新卒ヒサミズ
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2018年に新卒として入社。新規タイトルの開発にモーションデザイナーとして合流。開発・運用中のタイトルにも携わる。

「話しやすくてユーモアに溢れた人」「いろんな知識が豊富」
お互いの印象

ヒサミズ マサカズさんと初めてお会いしたのは新卒研修です。3DCGモーションの制作について、ユーモアや小ネタを交えてアドバイスしてくださったのを覚えています。トレーナーを担当していただくようになってからも、すごく話しやすい空気を作ってくださって本当にありがたかったです!

マサカズ それは良かった!
ヒサミズさんは、新卒ながら入社当初から色々な知識が豊富、という印象でした。最新の3DCGのトレンドから、「Unity」やモーションキャプチャーの機材・データの扱い方まで幅広い知識があって驚きました。と言っても、3DCGモデルに動きをつけるアニメーターとしての技術はこれから磨いていかないといけない部分が多かったね。

ヒサミズ はい。マサカズさんは業務が忙しい時期でも、質問をすると席まで来くださって「こうすると上手くいくよ」と目の前で実際にモーションを作ったり、手を加えて修正したりしてくださいました。目の前でやって見せてもらえるのが本当にわかりやすかったです。ただ、説明が終わるとすべてを消して帰られるのでメモを取るのに必死でした(笑)。

マサカズ 「わかった?」と聞いて、ヒサミズさんが「わかりました」と言うと、僕が手を加えた部分を消して、一からやってもらうと決めていたからね(笑)。やっぱり自分でやらないと力にならないので、いつも「上手くなってくれるように!」と思いながら、心を鬼にして消していたよ。

ヒサミズ 最初は「残していってくれれば良いのにな」と思っていました。が、だんだんと慣れていくうちに「このやり方だからこそ身に付くのが早かったんだ!」と気付きました。
また、日頃の雑談では、僕が服装に対してあまりに気を遣わなさ過ぎて、オシャレについてマサカズさんに色々なアドバイスをいただきました。

マサカズ 話は変わるけど、ヒサミズさんが「裏原宿」という言葉を知らなかったときは衝撃を受けました(笑)。「これがジェネレーションギャップ!?」って。あの後、お勧めした白無地Tシャツ専門店には行きましたか?

ヒサミズ ……あのお店はハードルが高すぎます!

マサカズ だよね。実は僕もまだ行ったことないんだ(笑)。

ヒサミズ え、そうだったんですか!

マサカズ ごめん(笑)。

簡易モーションキャプチャーの実装
制度期間中の思い出

マサカズ 現在は、僕とヒサミズさんは別々のプロジェクトに所属していますが、トレーナーになった当初は、新規タイトルの開発チームで一緒に、プレイアブルキャラクターのモーションなどを制作しましたね。ヒサミズさんは主人公のガード(防御)や壁にぶつかるといったダメージモーションを担当していて、ディレクターから「良いね!」と褒められていたのが印象に残っています。元々しっかりしていたから新人らしいエピソードがなかなか思い出せないなあ。

ヒサミズ いえいえ、初歩的なミスをしてしまい、みなさんにご迷惑をおかけしたことが何回もあります。例えば、初めて任された仕事で完成したデータを間違ったサーバーに上げてしまい、さらに全体に周知までしてしまって……。それ以降、サーバーにデータを上げるときはあらためて慎重を期すようになりました。

マサカズ 失敗を繰り返さないように気を付けるのは良い心がけです。
プロジェクトに配属されて3~4か月後には別のプロジェクトへ一緒に異動しましたね。専用のスーツとPCがあればモーションキャプチャーを撮影できる、「Xsens MVN」の導入検証から実装を一緒にしたのも思い出深いです。

「Xsens MVN Analyze/Animate 2019」紹介PVより

ヒサミズ 「Xsens MVN」はカメラを使わない手軽さから、用途によってはマッチするプロジェクトもあると感じました。そして、3DCGアーティストチーム内の定例ミーティングで、設置から撮影手順など「Xsens MVN」の使用方法をチーム内に共有できたのはすごく良い経験になりました。

マサカズ 先輩たちを相手に新しい情報をプレゼンする経験ができたのは良かったね。「Xsens MVN」はスーツを着て指定の場所にセンサーを付けるだけでどこでも撮影できて手軽なので、今も自分のプロジェクトで使っています。

ヒサミズ 他のプロジェクトでも使うことがあると聞くので、役に立っているのはうれしいです。より利用しやすいように、社内ツール内にある3DCGアーティストチームのWikiページにも使用方法をまとめてあるので、色々なプロジェクトでどんどん使用してほしいですね。

技術と経験をつぎ足して成長する
アニメーターとしての成長

マサカズ 出会ったときから「新人」というイメージがないくらい色々な知識があったので、業務の中でそれを活かしてくれていると思います。ただ、アニメーターとしては、制度期間中の1年間だけで、成長しているかどうかを判断するのはまだ早いかな、というのが正直な感想です。
アニメーターは成長にとても時間がかかる職種なので、鰻のタレみたいに経験や技術を絶えず注ぎ足して、熟成させていかないといけません。美味しいタレになるための訓練はきちんと続けていますか?

ヒサミズ はい。マサカズさんから教えていただいたクロッキーは、ポージングの訓練として今も続けています!

マサカズ 良いですね。動画や動いている人を見ながら体の形や筋肉の動きなどを素早く描画するのは、アニメーターとして人物に自然な動きをつけるすごく良い訓練になります。

ヒサミズ 他にも、一からモデルに動きをつけていく「手付けアニメーション(※)」を作る練習を自宅でしています。以前、手付けアニメーションを作る機会があったのですが、全くできなくて……。そのときから「このままではいけない!」と思って続けています。

(※)手付けアニメーション……モーションキャプチャーではなく、アニメーターが3DCGソフトを使用してアニメーションを作成すること。「キーフレームアニメーション」とも呼ばれる。

マサカズ 手付けアニメーションはアニメーターの実力がはっきりと出るので難しいものです。ですが、アニメーターとして力をつけるためには一番大切な作業なので、ぜひ練習し続けてください。
僕自身、今、業務で手付けアニメーションを担当しているんですが、奥が深くてすごく面白いですし、今でも新しい学びがたくさんあります。

ヒサミズ はい、引き続き練習を続けます!制度期間中には、手付けアニメーション制作について実践で教えていただく機会がなかなかなかったので、また同じプロジェクトになったときはぜひよろしくお願いします!

マサカズ もちろんです。楽しみですね!

想像力を育てる
アドバイスで意識していたところ

マサカズ 活き活きとしたモーションを作るためには、技術と同じくらい体の仕組みや筋肉の使い方、キャラクターにあったポージング、完成後の動きをイメージする想像力が必要です。その勉強のために、映画やマンガ、絵画といったゲーム以外のジャンルの作品に触れるようにしよう、といつも伝えていました。

ヒサミズ マサカズさんに勧められてから映画をよく観るようになりました。最近は洋画のシリーズものを初期の作品から観直しています。

マサカズ 映画はポージング1つとっても見せ方がきちんとしているので、モーションの過程を研究するのに最適です。ヒサミズさんはゲームに関するインプットはすでにかなりあるので、別のジャンルの素晴らしい作品から色使いや構図を吸収できるとゲーム制作に活かせると思います。

例えば、マンガにも、映画のように印象的なカット割りだったり、ポージングだったり。参考になる作品がたくさんあります。特にポージングは、筋肉の流れをきちんとわかった上でキャラクターのポージングが描かれていると、多少変わったポーズでもすごくかっこいいんですよね。とても参考になりますよ。
絵画もまた、色使いや構図がアニメーションの参考になると思います。東京はギャラリーや展覧会が多いので気になるものを見つけて行ってみましょう。

ヒサミズ ありがとうございます!

「重心はアニメーターの一生の課題」
印象に残っているアドバイス

ヒサミズ マサカズさんからのアドバイスで印象に残っているのは、「末端部分に気をつける」です。足先、指先、頭といった体の先端の流れはモーションの見栄えに直結すると教えていただいてからずっと気をつけています。例えば、ダンスシーンの動きを付けるときには、指先を追うといった末端の動きを特に意識しています。

マサカズ 体の末端まで丁寧に作ると、クオリティーが一気に上がります。プロの仕事としてそこを意識できているのは良いですね。手のポーズ1つとっても、かっこよく指をさしているように見せるには、人差し指をそらせたりひねったり、少し小指の曲げ方を変えてみたりと作り込みが必要です。そういった部分にこそキャラクターの性格が出るんです。

ヒサミズ 可愛さを表現するためのコツとして「指先にも表情があるから、そこも気を付けないといけない」という話を以前から聞いてはいたんですが、実際に作るとなるとやはり難しいです。手をグーにするときも「女の子らしい指使い」について考えて、小指や手首の返しを試行錯誤しています。まだまだ実力不足を感じます……。

マサカズ 大事なのは勉強と経験です。頑張ろう!

ヒサミズ はい!あと「重心は一生の課題」という言葉もすごく印象に残っています。プロでも悩むところだと聞きましたが、今まさに悩みまくっている最中です……。

マサカズ ポーズを作るときに腰の位置を1ミリ変えてしまうだけで、全身の重心がずれてしまいます。重心がずれないようにポーズをとっていくのはすごく難しく、今でも重心を失敗して一から作り直すことがあります。本当に重心はアニメーターの一生の課題なので、それを心に留めてくれているのはうれしいです。

お互いへのメッセージ

マサカズ ヒサミズさんには5年後、10年後、20年後に自分がどうなりたいのかという目標を持って仕事に取り組んでほしいです。今のヒサミズさんの目標をぜひ聞きたいな。

ヒサミズ 実はアニメーターとしてモーションを作り続けたいという漠然とした希望しかなく、自分の未来が全然思い描けていないんです……。

マサカズ 新卒で入社してまだ2年、されど2年です。焦らなくても良いけれど、明確な目標を立てることがアニメーターとして成長するための第一歩ですよ。

ヒサミズ はい!ちなみにマサカズさんは若手の頃どんな目標を持たれていたんですか?

マサカズ 僕はアニメーターとして若手の頃から今まで一貫した目標があります。「爽快感」や「かっこよさ」「可愛さ」など、その作品を最高に輝かせるモーションを作って、世界中の人に感動してもらうことです。それを達成するのが僕の人生の目標です。
ヒサミズさんは、まず自分が今何をしたいのか、1年後にどうなりたいのかといったイメージから始めると良いのかな。そのイメージが目標に繋がって、目標は「もっと頑張ろう!」「もっと良いものを作りたい!」という成長の活力になります。ほら、言ってみて。

ヒサミズ 今はインゲームのアニメーションを担当させていただくことが多いので、ゲーム中のムービーといったカットシーン制作も経験してみたいです。あと、業務で手付けアニメーション制作が自信をもってできるくらい成長したいです!

マサカズ 良いですね!そうやってやりたいことを突き詰めて考えて、次に同じプロジェクトになったときには5年後、10年後、20年後の目標を教えてください。持ち前の真面目さを活かして目標に突き進めば、ヒサミズさんはきっと良いアニメーターになってくれると期待しています。

ヒサミズ ありがとうございます。頑張ります!