プラットフォームエキスパートの仕事とは?あらゆるゲームをリリースする場を最高の状態に整える【サイゲームス仕事百科】

サイゲームスはこれまでに多くのソーシャルゲームやコンシューマーゲームをリリースしてきました。ゲームのリリースやアップデートなどは、サイゲームスから直接配信されるのではなく、Google PlayやApp Store、Steamなどの「プラットフォーム」を介して行われます。今回は各ゲームプロジェクトと連携してプラットフォームに関するサポートを行う「プラットフォームエキスパート(以下、PEX)」の仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

ゲームがユーザーのみなさんに届くまで
プロジェクトとプラットフォームを繋ぐ

PEXは「最高のゲームを世に放つ場所を最高の状態に整えて保つこと」をミッションに掲げ、プロジェクトがアプリやゲームなどをリリースするにあたり、Google Play、App Store、Steam、PS Store、ニンテンドーeショップなど、プラットフォーム関連の手続きで詰まることがないようにサポートを行う部署です。

プラットフォームへのリリースサポートと聞くと、一度プラットフォームにゲームをリリースしたらそれでサポート終了では?と思う方がいるかもしれませんが、実際はそうとは限りません。恒常的にプラットフォームから発信されるガイドラインの更新や、申請がリジェクト(却下)された事例をいち早く社内に向けて発信し、知見の集積や共有を行うとともに、ゲームのアップデートや追加コンテンツがトラブルなく更新・リリースできるよう相談に乗ることもあります。その他、プラットフォーム関連のアカウント管理や便利なツールの開発も行っています。

そもそもプラットフォームに関わる業務を専門として独立している部署は、一般的にそう多くはないようです。さらに、サイゲームスはモバイルゲームとコンシューマーゲームのいずれも開発・リリースを行っているため、どちらのプラットフォームでもリリースサポートを行っている点が特徴です。
PEXは元々、インフラエンジニアのアカウント管理チームとしてサポートを行ってきましたが、スマートフォンゲームの開発が盛んになった2016年4月頃に部署が設立されました。

プラットフォームエキスパートの主な仕事内容

PEXのチーム構成と各業務内容は、大きく以下の通りです。

【チーム体制】
■リリースサポートチーム
・ゲームをリリースする際のガイドライン適合事前相談および審査対応
・新規プロジェクトのリリースフローの構築、必要な準備物の仕様共有
・未経験のプラットフォームの仕様調査とリリースフローの構築・共有
・各プロジェクトの審査結果から得た知見の集積・共有

■ツール開発チーム
・プラットフォームからのメールを解析・通知するツールをPython/PHP/Shell Scriptで開発

リリースサポートチームはリリースの際にプロジェクトと連携を取る以外に、新規プロジェクトがプラットフォームでの配信を検討した際に指針となるFAQなどを作成。過去の事例やその理由、プラットフォーム側のメンテナンス情報などをまとめています。
なお、役割分担については特定のプラットフォームやアプリ、社内プロジェクト単位で担当者を割り当てるのではなく、メンバー全員がどのプラットフォームやアプリでも担当できるようにしています。

また、業務においては、以下3点を特に留意しています。

  1. 得た知見を余すことなくプロジェクト側に共有する
  2. 各プラットフォームの最新情報(すべきこと、便利なこと)を漏らさず素早くキャッチアップする
  3. 今後出てきそうな課題を検知してプロジェクトに伝える

これに加え、プラットフォームの情報の発信の仕方・書き方には独自の特徴があるため、ガイドラインを読み込み、プラットフォームごとに考え方を理解し、わかりやすく伝えることが重要です。

プラットフォームエキスパートの業務フロー

続いて、PEXの業務フローをご紹介します。ここでは代表的な例として、プロジェクトからリリースサポートチームにリリースに関する相談があった場合の流れを簡単にご紹介します。

1.依頼・相談

プロジェクトや部署からプラットフォームに関する依頼・相談が来ます。リリース前後など問い合わせが集中する時期もありますが、平均すると1日2~3件ほどのペースで依頼・相談があります。単発というよりは関連した一連の相談を受けることが多く、案件を丁寧にヒアリングしていきます。

2.プラットフォームの調査・検証

相談のあった対象のプラットフォームについて、ガイドラインや過去のリジェクト事例から関連する記述がないか調査します。ガイドラインのドキュメントは英語で書かれていることが多く、表現や言い回しもガイドラインによって千差万別であるため、読み解きには若干のコツが必要です。また、機能面で実現可能か不可能かという相談に対してはプラットフォームで実際に操作しながら検証を行います。

3.結果を基にチーム内で議論

調査・検証の結果を基に、その検証結果が本当に正しいのか、別の解釈がないかなどをチーム内で議論します。

4.結論をプロジェクトに返答

検証・調査の結果が出たら、プロジェクトにどう伝えるかを検討します。ガイドラインの解釈をわかりやすく示せているか、質問の意図を汲んだ返信になっているか、また受け取った人の解釈によってその後の対応がぶれることがないかなどに注意して、文章を作成します。返信する文面はチーム内でチェックし、OKが出てから返しています。

5.FAQの作成・ドキュメント化

今回の相談の内容が社内で共有できるものであれば、別のプロジェクトでも役立てられるようにFAQにまとめて公開します。特定のケースで必要なノウハウではなく、すべてのプロジェクトが知っておいた方が良い知見の場合は、仕様や対応策をまとめてドキュメント化します。

PEXの業務内容を大きく二つに分けると、上記のようにプロジェクトから相談があった場合と、プラットフォームからニュースや更新情報があった場合があります。後者は下記のようなフローで業務を行います。

プラットフォームからのニュースや更新情報は一つのサイトにまとまっているわけではありません。プラットフォームごとに英語のサイトに更新があったり、メール通知があったりと様々なかたちで情報が更新されますので、それらの情報を集積する必要があります。PEXでは機械的に1日1回、見て回る対象に差分がないかをチェックし、差分があれば社内SNS上で通知するシステムを導入しています。
複数のプラットフォームをサポートしているため効率的な情報のキャッチアップ方法を模索しており、よく見るガイドラインの更新やアプリの審査ステータスの変更通知など、できる限り自動化に取り組んでいます。

プラットフォームエキスパートに
求められるマインドとスキル

ここでは、PEXのスタッフに求められるスキルとマインドについてご紹介します。

■誰よりも高い当事者意識を持つ

PEXは一つの操作がゲームのリリースや更新に重大な影響を及ぼしかねない責任の大きな部署であるため、高い当事者意識を持つことが重要です。
例えば、プロジェクトからバージョンの更新の話があった際は、プロジェクトがやりたいことをしっかり「自分ゴト化」する必要があります。プロジェクトとプラットフォームの両方に興味を強く持たなければ、更新時の機能や施策に含まれるガイドライン違反やプラットフォームから通知された期限付きの要対応項目などを見落としてしまい、大きな問題に発展しかねないからです。

■多くの視点を持つ

様々なプロジェクトや部署と関わるため、多くの視点を持つことも大事です。業務では、調査やテストに使用するアカウントを発行してくれるシステム管理チームや、配信契約に関する相談先となる法務、プラットフォームごとの差別表現・宗教的表現の規制に変更があったときの相談先となる倫理委員会など、様々な部署と連携しています。そのため、社内外関わらず色々なチームの視点を持つことが円滑な業務に役立ちます。

■一つひとつの経験を大事にする

当事者意識と多くの視点を持つためにも、何か新しいことを知ったときにはしっかりと自分の中に落とし込んで理解する方が向いています。単に知って納得するのではなく、疑問や意見を持って考えを深め、自分の言葉で人に説明でき、実際に実行できるようになることが本当の意味での「理解」だと考えています。一つひとつの学びや経験を大事にできる方は、PEXとしても活躍できるでしょう。

他にも、ロジカルに物事を考えられる方、ゲームが好きである方、ドキュメントを読む際に必要な英語に抵抗感がない方などが向いています。
スキル面では、プログラミングの基本さえ知っていれば特にこれがなくてはいけないということはありません。業務に必要なスキルやツール開発に必要な言語の知識は、合流後にお伝えできます。

プラットフォームエキスパートの仕事のやりがいとは?

PEXのスタッフが一番やりがいを感じるのは、何といってもゲームをリリースできたときです。直接ゲームを開発する部署ではありませんが、ゲームをユーザーのみなさんの元へ届ける最後の瞬間を見守ることになります。特にリリースが近くなるとストアの設定も必要になり、PEXも慌ただしくなってきます。そうした苦労を経てゲームを無事にリリースできたときは、非常に喜びを感じます。

あらゆるプラットフォーム、あらゆるプロジェクト・部署と関わることになるという点も大きな魅力です。やり取りする職種も様々で、プロジェクトマネージャー、エンジニア、プランナーなど多種多様な人の知識や考え方を知れます。
例えば今まで経験したことのないプラットフォームでのリリースを検討する際は、何もわからない状態でリサーチから始めることになります。ドキュメントを熟読したり、プラットフォーム側の担当者とのミーティングを何度も重ねたり実際に使ってみたりと、一歩一歩理解を深めていくときには開拓者になったような気分です。調べていくうちに別のプラットフォームと似通った部分が判明したときなどは、途端に視界が開けたような達成感もあります。

具体的には、2020年2月にリリースした『グランブルーファンタジー ヴァーサス(以下、GBVS)』はPS4 ®で、2020年11月にリリースした『シャドウバースチャンピオンズバトル』はSwitchで、それぞれサイゲームスから初めてリリースしたゲームです。GBVSのリリース時は、『グランブルーファンタジー(以下、グラブル)』と前例になかった連携(※)をさせようという話になっていたので、どのように実現できるのか、プロジェクトマネージャーやパートナーである開発会社、プラットフォーム側の担当者の方と連日ミーティングを繰り返して模索していました。上手くできそうな流れが見つかって、最終的にリリースできたときはとてもうれしかったです。

※ グラブルで利用できるシリアルコードを、PS4 ® 版GBVSというコンシューマータイトルのゲーム内から発行可能としたもの

プラットフォームエキスパートのキャリアパス

現在PEXのスタッフには、前職で同じような仕事を経験していた人はほとんどいません。中にはクライアントサイドエンジニアでリリースを担当していたスタッフやプラットフォーム側で携わっていたスタッフもいますが、多くの人が異業界・異業種から転職してきたエンジニアです。
他社でもあまり多くない部署であり、そういう意味でもほとんどの人が未経験からの挑戦になります。そのため、様々なプラットフォームに関わってみたいという想いが強い方であれば、新卒や第二新卒の方でも他の方と同じようにスタートできます。

合流後はプラットフォームの専門用語や仕組みなどを身に付けるため、座学から学んでいくことになります。しかし、プラットフォームはいくら知識を付けても実際に操作しないとわからないところが多くあります。ただし、操作ミスをしてしまうとユーザーのみなさんにご迷惑をおかけすることになる可能性も高いため、知識が浅いうちから実務で慣れていきましょう、というわけにはいかない点が難しいところです。ポテンシャルが高い方でも一人前になるのには1年以上かかると考えてよいでしょう。

PEXで経験を積むと、何をいつまでにやらなくてはいけないかを調べ、スケジュールを作成してそれに沿って進めることになるため、ディレクションには非常に強くなります。様々な部署やプロジェクトと横断的にやり取りをすることにもなり、マネージャーやサブマネージャーなどのキャリアも開けやすいです。

サイゲームスのプラットフォームエキスパートを
目指す人へのアドバイス

サイゲームスではブラウザゲーム、モバイルゲーム、コンシューマーゲームと、幅広いゲームをリリースしています。PEXは全てのプロジェクトのゲームリリースに携わるため、多種多様なプラットフォームに関われ、たくさんの経験ができると言えるでしょう。

採用面接では、上記に挙げたようなマインドを持っているかを見ています。自分のことをどれだけ把握しているかを知りたいので、長所や短所をお聞きすることもあります。また、なるべく「ゲームは好きですか?」という質問をするようにしています。経験がなくても、ゲームへの熱い思いがある方、プラットフォームに興味がある方はぜひそれをお聞かせください。


以上、プラットフォームエキスパートの仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

プラットフォームエンジニア/東京 第二新卒/技術職/東京

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