CyFreshers ~新卒1年間の成長記録~ Vol.5 ショウ/コンポーザーの場合

サイゲームスには、毎年フレッシュな新卒社員が入社しています。「CyFreshers(サイフレッシャーズ)」は、入社2年目の新人社員に、会社や仕事について語ってもらう連載です。新卒社員がどんな想いを持って入社し、入社後の1年間で何を経験して、どう成長を遂げたのか、そして今どんな夢や目標を持っているのか?率直に語ってもらいました。

2020年新卒 コンポーザーショウ
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2020年サウンド職として新卒入社。研修後、『プリンセスコネクト!Re:Dive』のミュージックチームに配属され、現職。

既存の400曲を覚えることから開始
今では作曲、収録ディレクション、組み込みまで

現在はどんな業務を担当していますか?

『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』のミュージックチームに所属して、ゲーム内で使われるBGMの作曲や、外部の作曲家の方への発注、ゲーム内の会話パートで使用するBGMの選曲、作成した楽曲データをゲームに組み込める形式にする作業などを担当しています。それから、『プリコネR』の場合はオーケストラによる生演奏の楽曲を使用しているので、スタジオ収録のディレクションもしています。ゲーム音楽に関わることはなんでもやっているという感じです。
曲づくりの際は、まずプランナーから「こういうシーンに使うこういう感じのBGMが欲しい」というオーダーが入り、オーダーにシナリオやボスの仕様、背景などをもらって、そこからイメージを膨らませて作っています。オーダーに沿って曲を作るだけでなく、もっと良くなりそうなアイディアがあれば、こちらから「こういう曲はどうか」「こうしたら良いのではないか」と意見を出すこともありますね。

職場はどのような雰囲気ですか?

『プリコネR』には私を含め5名のミュージック担当がいて、年齢の垣根なくみんな仲が良いです。新人でも責任の大きい仕事をどんどん任せてもらえるし、自分の考えで行動している様子を見守ってもらえている実感があります。でも、こちらが困っているときは親身になって相談に乗ってもらえるので、仕事はとてもやりやすいです。
先ほどお話ししたように、『プリコネR』は自分で作曲もすれば外部の方への発注もあり、収録のディレクションもあるなど色々な経験ができるので、新人が配属されることが多いんです。実際、仕事を覚える意味ではすごく良い環境です。特に、毎月生演奏の収録に立ち会えるのは、かなり恵まれた環境だと思います。

配属された当初はどんな仕事を任されましたか?

最初は「『プリコネR』で使われている曲を全部覚える」ことでした。どんなシーンでどんな曲が使われているかをすべて頭に入れる作業です。私が配属された時点で400曲近くあったのですが、会話パートをひたすら視聴して、半年ぐらいかけて覚えました。時間はかかりましたが、これをやったおかげで『プリコネR』の楽曲の傾向が掴めましたし、キャラ専用の曲やシーン専用の曲など、使用する場面が限定されている曲もあるので、作曲のコツがわかりました。
また、この作業は選曲の練習も兼ねていて、声優さんの演技を際立たせるために音数の少ない曲を使うとか、あえて無音のシーンを入れることの効果を学びました。
それから、ストーリー展開に合わせて曲を選ぶことの大切さを感じましたね。例えば、話のメイン部分はシリアスだけれども、序盤はキャラクターたちの平穏なやり取りで始まるストーリーがあったとします。展開を知っていると、メイン部分に合わせてシリアスな曲を選んでしまいがちなのですが、それだと序盤の平穏なやり取りと合わないし、一種のネタバレにもなってしまいます。ゲーム体験を損なわないような曲選びという視点を得られたのは大きいです。

仕事の進め方はどんな風に覚えていきましたか?

曲づくりの練習をしつつ、最初は会話パートの選曲を担当しながら覚えていきました。2020年5月末に始まったイベントでは、私が選曲したものが使われています。入って2か月も経たないうちに自分の仕事が世に出たのは、すごいスピード感だと思いました。
一方で、曲づくりに関してはとにかく時間をかけさせてもらえました。「時間に追われて焦って作ったものではなく、ユーザーのみなさんに喜んでいただくことを最優先に音楽を提供する」という考えがサイゲームスのミュージックチーム内で浸透していて、時間をかけてじっくりと取り組めたことで、自身の成長にも繋がったと思います。現在は、1人で仕事を進められるまでになりました。

働く上で大事にしていることはありますか?

私が所属しているチームの場合、どの曲を誰が作るかは基本的に挙手制なんです。作りたいと手を挙げた人に任せてもらえます。得意、不得意はありますが、作ることが難しい曲ほど得られるものは大きいので、できることは全部チャンスだと思って取り組むようにしています。
アニメの映像に合わせて曲を付けるフィルムスコアリングという作曲方法があるのですが、先日、『プリコネR』メインストーリー内でこれに初挑戦しました。シーンに合わせて選曲するという、会話パートの選曲で培ってきた経験を活かすことができましたし、自分の能力を総動員して良いものになるように努めました。

▲社内スタジオを利用し、細かい出音の確認をしている様子

人に喜ばれる音楽を作りたい
捨て切れない想いから音楽の道へ

学生時代はどんなことを学んでいましたか?

実は、私は大学を卒業した後に別の学校に入り直しているんです。大学では社会学系の学部で映画・新聞・テレビなどのメディア全般について学んでいました。その頃は音楽を仕事にするつもりはなかったので、趣味で作曲したり演奏活動をしたりしていました。その後に入り直した学校では、音楽全般のことを学びました。ただ、音楽以外にもいろんな視点を持っていたほうが良いと考え、イラストや3Dモデリングも独学で学びました。これらは本格的に身につけるというよりは、自分の専門外の分野に関しても理解を深めるために勉強しました。

どんなきっかけでゲーム業界を志したのでしょうか?

元々、周りの影響もあって、社会に出たらメーカー系の企業に就職するのが自分の進むべき道だという思い込みがあったんですね。音楽もゲームも好きでしたが、それを仕事にするという発想は当初ありませんでした。でも、個人で音楽活動などをしている中で、だんだんと音楽に対する想いが大きくなっていきました。
大学に通っていた頃から演奏活動はしていて、SNSなどで投稿をすることもありました。そんなとき、自分がアップしたある曲にたくさんの反響があったんです。他にも、ライブハウスで演奏したら想像以上に人が来てくれるなど、だんだんと、自分の演奏を評価してもらえるようになっていきました。
その流れの中で、あるイベントで演奏する機会があり、その大舞台でたくさんの人の前で演奏したときにすごく感動したんです。自分は音楽で人を喜ばせる仕事をしたいと思い、音楽の道に進むことを決めました。親には反対されましたが、自分のやりたいことがはっきり見えたので、すぐに行動に移しました。

サイゲームスに入ろうと思った理由は何ですか?

良いものを作るために妥協しないところと、ゲームとしての新しい表現を追求する姿勢に惹かれたからです。音楽についてもクオリティーをとことん追求しているし、オーケストラを使った生演奏など贅沢な音づくりもしているし、この会社なら自分のやりたいことができるだろうと考えました。採用の面接でも、面接官の話から良いものを作ろうという意気込みを感じたので、間違いないだろうと確信しました。

就職活動のために学生時代意識していたことはありますか?

学校内だけではなく、外部にもどんどん目を向けたことですね。学内で評価されることも大切ですが、本当の評価は外部にあると思っていました。私の場合、本命はゲーム業界でしたが、とにかくまずは音楽の仕事ができる会社に就職する必要があると思っていたので、ゲーム音楽に限らず、作曲、効果音、組み込みなど学べるものは全部学びました。

最初は余計なことを考えて不安になっていた
今は良いものを作ることに集中できる

この1年で一番達成感を得たエピソードを教えてください。

『プリコネR』3周年のストーリーイベント「絆、つないで。こころ、結んで。」のマップで再生される「かけがえのない日常」という曲を担当した経験ですね。『プリコネR』で初のアニバーサリーストーリーイベントという特別な立ち位置、かつこれまでのイベントとは雰囲気も違うストーリーだったため、プレッシャーもありました。元々得意としていたジャンルの曲調ではなかったので苦労もあり、1か月くらいかけて完成したのですが、イベントが公開された後に「この曲を聴くと切なくなる」「イベントシーンが思い出されて涙が出てくる」といった声をいただけたことが本当にうれしかったです。ユーザーの方々の心に残るような曲になったことに喜びと達成感がありました。

▲3周年のアニバーサリーストーリーイベントのために制作した「かけがえのない日常」。※再生ボタンを押すと音楽が流れます

反対に、失敗談や大変な思いをしたエピソードはありますか?

ある曲を作るときになかなか捗らないことがあり、そのときに1人で悩んで1人で解決させようとした結果、作業時間が長くなって多方面に迷惑をかけてしまったことです。チーム作業であることを意識できていなかったことが原因です。
曲づくりは孤独な作業という思い込みがあったのですが、決してそんなことはなく、制作途中のものを気軽に聴いてもらって何気ない会話をする中で新しいアイディアが見つかることがわかりました。自分だけで作ろうとすると、自分の中にあるものしか作れないし、弱点にも気づけません。だから、それ以降は迷ったらまず聴いてもらうようにしています。
逆に、他の人が困っているときは私が意見を言うこともあります。先輩後輩関係なく、気付いたことや思ったことを話し合える環境は、本当にありがたいと思います。

入社してからの自分を振り返って、成長したと感じる部分はどんなところですか?

入社時は周りのレベルの高さに圧倒されていて、自分がついていけるのか不安だらけでした。そんなときに、先輩から「不安になるのは余計なことを考えているから。とにかく良いものを作りましょう。楽しみましょう」とアドバイスをもらいました。
そこから考え方が変わり、不安なことは不安なままにせず、積極的に先輩に相談するようにしました。先輩も同じような経験をしているので、実用的なアドバイスをもらえます。今でも悩んだりすることはありますが、抽象的な不安に囚われて行き詰まることはなくなり、良いものを作ることに注力できるようになりました。

今後の目標や目指しているものを教えてください。

曲はずっと書いていたいですね。それから、音楽の知識や技術を拡張するのはもちろんのこと、次は「音」そのものの知識を増やしたり理解を深めたりして、新しい表現を模索したいと思っています。ゲームの音楽も年々進歩していて、新しい表現が次々と出てきています。個人的には、インタラクティブミュージック(※)の可能性を追究して、ゲームへの没入感を極限まで高める音楽を作りたいと思っています。

※ゲームの展開や状況に応じてシームレスに変化する音楽のこと


以上、コンポーザーのショウさんへのインタビューをお届けしました。本連載では、今後もフレッシュに活躍する新卒の姿をシリーズでお伝えします。お楽しみに!

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