【マネージャーの思考】サウンド本部の組織づくり 音のプロフェッショナルが集う「専門商社」に

「マネージャーの思考」は、サイゲームスの各部署のマネージャーから、組織づくりの考え方や今後の展望を語ってもらう連載です。今回は、サウンド本部の本部長・マサユキにインタビューを実施。サウンド専門部署の立ち上げ、ならびに業務ごとに分業化させた経緯、そしてチームスタッフに求める人物像などを聞きました。

サウンド本部 本部長マサユキ
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専門学校で電子音楽の作曲を学ぶ。卒業後、ゲームの開発会社でサウンドやプロジェクトマネージャーを経験し、2013年にサイゲームスに合流。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』『三国志パズル大戦』などのサウンドを担当した後、現在はサウンド本部の本部長として体制や設備面の整備に尽力している。

幼少期からゲーム音楽に憧れ
サイゲームスに合流しサウンド部門を立ち上げ

最初に、これまでのキャリアについて教えてください。

学生時代は音楽の専門学校に通っていて、作曲コースで電子音楽を勉強していました。電子音楽というとテクノ系だと思われがちなのですが、現代音楽の発展としての電子楽器を使った音楽のことで、ミュージックコンクレートやアルゴリズムコンポジションなどの勉強をしていました。
卒業後はゲームの開発会社に入って、14年間サウンドのスタッフとして勤務していました。そこでは、CD-ROM時代のコンシューマー機から携帯機、アーケードゲームやイベント音響まで、曲、効果音やMA(※)など、一通りの経験を積みました。サウンドの仕事が少ない時期もあって、プロジェクトマネージャーも兼務していたこともありましたね。その時期にはプロマネとしてゲーム会社に企画のプレゼンに行ったこともありました。

※MA……マルチオーディオの略。録音した音声素材の音量バランス調整やノイズ除去を含めて、複数の音源を編集・追加すること

ゲーム音楽の道に進むきっかけはなんだったのでしょうか。

父がコンピューター好きで、子どもの頃に初期のホビーパソコンを買ってきたので無邪気に触っていました。BASIC言語でPSG三和音を使って曲を作れる最初のパソコンだったんですよ。それがお気に入りのおもちゃでした。
ゲームは小学4年生くらいにハマって。ゲーム音楽は、最初は近所のお兄さんが買っていたレコードをカセットテープにダビングして聴いていたところから始まり、中学生になった頃にはサウンドトラックCDをすごく聴き込んでいました。その頃から自分もゲームの音に関わる仕事をしたいなと思い始めたんです。
当時は作曲したいという気持ちが一番で、コンピューターの音楽に関する勉強が必要だと思ったので専門学校に進みました。

ちなみに、楽器は何かやっていましたか?

小学生のときに部活動でアルトホルンをやっていました。中学生になると吹奏楽部に入ってユーフォニアムをやっていましたね。高校はオーケストラのあるところで、そこでは未経験でいきなり弦楽器のチェロを担当することになりました(笑)。その後、3年生のときに学生指揮者として定期演奏会でタクトを振ったのが良い思い出です。それと並行して、ずっとゲーム音楽のコピーやアレンジをシンセサイザーの打ち込みで作ることを続けていました。

▲幼少期の写真。幼い頃から音楽に親しんでいました

サイゲームスに合流した理由を教えてください。

前職の会社がゲームから別の事業に軸足を移していた時期があって、あまり音の仕事ができないときがありました。そんなときにサイゲームスの知り合いから誘われたんです。2013年の初頭は、『神撃のバハムート(以下、バハムート)』がゲームにキャラクターボイスや曲を実装し始めるタイミングだったのと、ソーシャルゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ(以下、デレマス/配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』もボイスを入れていこうとしていた時期でした。今後ソーシャルゲームが発展していって、コンシューマーと同じようにサウンドの担う役割が大きくなってくることは予測できていたので、サウンドチームの立ち上げから行うスタッフとして声を掛けてもらったかたちでしたね。

合流後はどんな業務を担当しましたか?

『バハムート』の音声の収録のセッティングなどを行いました。当時はサウンド専門のスタッフが自分だけだったので、音響制作会社にお声掛けして契約を結ぶところからでした。『デレマス』の方はバンダイナムコエンターテインメントさんが収録した音声ファイルを送ってくださるので、そのデータをゲームに実装するにあたってどう変換するかなどのレギュレーションを決めて変換、実装していきました。
あとは、『グランブルーファンタジー』の効果音制作や『三国志パズル大戦』の曲や効果音の制作などが初期のお仕事でした。

専門性を重視して
サウンド業務を分業化

当初サウンド専門のスタッフはマサユキさんだけだったわけですが、そこからどのようにサウンドの専門部署を立ち上げていったのでしょうか。

最初から会社としてサウンド部門を大きくしていく必要がある、という考えでした。合流した当時は『バハムート』『デレマス』『グランブルーファンタジー』や、他にも稼働中のプロジェクトがあって、オーケストラでの収録から効果音まで幅広くサウンドを用意する必要があったんです。自分一人では到底さばけない仕事量だったので、新しくスタッフを採用することになりました。社長の渡邊も「国内最強のサウンドチームを作りたい」と言っていたので、まず人を増やしていくところから始めていきました。

2023年10月に組織体制が変わり、上位組織として「サウンド本部」が設立し、本部制となりました。また、ライブエンターテインメントやPV、CMなどの映像メディア業務を行う「サウンドメディア室」が新しく発足しました。「サウンド部」が「サウンド本部」に名称を変更したのはその経緯からでしょうか?

▲2023年10月から上位組織にサウンド本部が設立。本部制となりました

確かに新しくサウンドメディア室を立ち上げたのでそう見えるかもしれませんが、サウンドメディア室を発足したからサウンド本部になったわけではありません。チームの細分化を進めていきながらも、全体をさらに一つにまとめるために本部制というかたちにしました。
元々、サイゲームスのサウンド職は、業務領域を専門性に沿って細かく分けることで、特定の業務やプロジェクトに特化したチームを作ってきました。
ただ、そのように専門性の高いチームを作っていくには、各チーム同士の文化の分断や連携の混乱を避けるために全体を俯瞰して管理、運営できる視点も必要です。そのため、上位組織の強化も必要と考え、本部化することになりました。

※組織ごとの詳しい業務内容はこちらの記事をご覧ください

BGMや効果音など、役割ごとに部署が細分化された体制を取っているのはなぜでしょうか。

元々、国内のゲーム会社ではサウンド制作において分業しない体制も存在しました。サイゲームスも当初、分業せずにサウンド全般に詳しいスタッフだけを集めて、個人がプロジェクト全体を把握できるメリットを活かしていこうと考えていた時期がありました。ただ、残念ながらそんなマルチな能力を持った方は業界に多くはいないんですよね。そんな中でも何人か今でもチームのコアになるような人が合流してくれて、少しずつチームとして大きくできました。

ただ、『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』の開発が始まったあたりからサウンドの担う業務がかなり大きくなって、分業制にしないと採用も間に合わず、チームが維持できなくなったんです。そこで最初はミュージックと効果音を作るチームで分けることにしました。

ゲームの開発規模が大きくなるにつれて分業制も進んでいったのですね。

はい。ゲーム業界の外に目を向けると、音楽・音響業界は分業制で成り立ってるんですよね。映画だと一般的には効果音を作る人は作曲しませんし、逆に映画音楽を作る人は効果音を作りません。また、撮影現場には録音技師がいますし、それとは別にミックスには専門の技師がいます。それぞれの専門のプロフェッショナルの仕事の結果として全体の音響が完成しているわけですよね。同じようにゲーム業界も専門性を高めるために専業化していくべきだとずっと考えていました。そんな中、『プリコネR』の開発がチームを細分化する良いタイミングになったんです。

メンバーの前職の経験などについて、どのようなスタッフが在籍していますか?

最初は「マルチスキル」なスタッフが必要だったので、ゲーム業界の開発者を重視していました。次第に専門性の高い人が必要になってきたことから、ゲーム業界だけではなく、音楽業界や映像業界出身者の採用を増やしていきました。そのため、今では音楽業界で活躍していたスタッフもミュージックチームに増えていますし、映画やアニメなどでの音響効果の経験者や、スタジオのエンジニアだったスタッフなども在籍しています。ゲーム業界以外から専門性を持って合流した人が増えていますね。
ただ、今度は専門性が高まっていくに従って、その中でゲーム開発の全体を見渡せる力や足りない部分を協力して補うことも重要になってきており、継続して「マルチスキル」なスタッフの採用もしています。

年齢層や男女比はどうですか?

平均年齢は約32歳です。男女比は男性が6割、女性が4割程度です。

※サイゲームスの平均年齢は34.3歳(2023年8月31日時点)。20代の若手から40代以上のベテランまで、年齢の垣根を越えて力を合わせながら「最高のコンテンツ作り」に励んでいます

分業制にした体制面の他に、サイゲームスのサウンド本部の特徴はなんでしょうか。

専門性の話はしましたが、専門外の業務であってもやる気があれば挑戦できる、それを後押しする風土・環境があるところ、でしょうか。ベテラン、若手の括りも意識せず、チャレンジをする人を応援する風土があると考えています。そういった実例もたくさんありますね。
本部制にした経緯の一つでもあるのですが、細分化した組織ではありつつ、現在はチャレンジをしたスタッフの転属などマルチなキャリアパスも描けるような制度を整備しているところです。
今後もさらに多様な人材が、それぞれやりがいを持って働けるチームを作っていきたいですね。

あとは、サウンドアドミニストレーターがいるところも特徴だと思います。サウンド関連の業務にはたくさんの機材やソフトウェアが必要になるので、本来であれば新しい機材を買うときは上長を説得して店舗から見積もりを取って稟議書を書いて……といった事務作業から、実際に機材のセットアップなど、クリエイター自身がクリエイティブ以外のことをやらねばならず、大変なんです。ただ、機材関係の知識を持ったスタッフがそういった業務をサポートすれば、クリエイターが制作物に集中する時間を増やせます。
こんなふうにそれぞれのチームが担うべき役割をしっかり分けた上で、ゲームを作るときには一つのチームとして円滑に機能する組織づくりを目指しています。

「最高のコンテンツ」とは
ユーザー目線で最高なもの

サウンド本部を一言でいうとどんなチームですか?

サウンドの「専門商社」ですね。サウンドは他の部署からするとわかりにくい領域なのかなと考えている部分があります。音の良し悪しのジャッジはみんななんとなくできるけど、どうやったらより良いものになるのか言語化しづらいジャンルといいますか……。そのため、メインとして内部にサウンドを作る機能をしっかりと持ちつつ、他部署との仲介を行うことも全体としては必要な役割だと思っています。また、自分たちで作るだけでなく、外部のパートナーに発注させていただくこともあるので業務の幅が広いです。

音を作るだけではなく様々な役割を担いながら、「音のことならサウンド本部に頼めば良いものを作ってくれる」と言われるような組織を目指しています。

サウンド本部の展望を教えてください。

「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンがあるように、我々は最高のサウンドを作っていかなければいけません。それを達成するためには、各部署の専門性も最高じゃなければいけないと考えています。今いるスタッフの成長に繋げるサポートをしていきながら、よりチームごとの専門性を高めつつ、必要に応じてチームの細分化も進めていきます。また、昨今はサイゲームスのプロジェクトが増えているので、まだまだスタッフを増員していかなければいけない段階です。

サイゲームスにはサウンドスタジオやフォーリースタジオもあります。設備面については整ってきたといえるのではないでしょうか。

まだまだ設備面も充実させていきたいです。音声収録スタジオは現在東京に四つあるのですが、収録量はどんどん増えてきています。
今はMAも同じスタジオを使いますし、メディア業務なども増加傾向で、結果慢性的にスタジオが足りなくなってしまっているので、できれば増やしたいですね。
フォーリースタジオは大阪拠点にありますが、今後のプロジェクトや使用時の移動などを考えると東京にも設置したいですし、他にもスタッフの増加に伴ってフロアの増床も検討中ですし……すべて実現できるかどうかはわかりませんが、今現在はそんなことを考えています。

▲大阪フォーリースタジオ。ガイコツのモンスターの音を複数人で収録する様子

※大阪フォーリースタジオの詳細はこちらの記事をご覧ください

サウンド本部にはどのような人に来てほしいですか?

ゲームサウンド業界では個人の作家性を発揮することに重きを置いている方もいるかと思いますが、サイゲームスはチームで「最高のコンテンツを作る」ことを重要視しています。そのため、チームでのものづくりをポジティブに捉えられる人に来ていただきたいです。
また、「最高のコンテンツ」は、あくまでもユーザーのみなさんにとって最高なものでなくてはいけません。そこに共感してくれる人ですね。

あとは新しいことや技術に貪欲に挑戦する人ですね。特に立体音響のジャンルはゲームオーディオで発展している技術もあるので、最先端のことができている業界なんじゃないかと思っています。そういうものに敏感でトライしたいと思っている人に来てほしいです。

最後にサイゲームスの好きなところを教えてください。

これまでの話に通じるところなんですけど、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンがしっかりあるところです。このビジョンがあることで、自分たちが何をしなければいけないのかブレずに会社全体で同じ方向を向いていけると感じています。
「最高のコンテンツを作る」ためには最高のサウンド環境が必要で、「こういう機材や設備が必要です」と要望を出したらちゃんと真摯に対応してもらえる、サイゲームスのそういうところが好きです。

以上、サウンド本部のマネージャーのインタビューをお届けしました。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

キャリア採用 サウンド

編集後記「マネージャーの横顔」

休日はどんなことをしていますか?

キャンプにハマっています。昔はよく行っていたのですが、学生時代以降は音楽制作の環境を整えたり、バイクに乗ったりしていたのでお金がみるみるなくなって、キャンプに行っている場合じゃなくってしまったんです(笑)。でも、子どもができたことをきっかけに久しぶりに家族で行ってみたら、昔使ったキャンプ道具も意外とまだ使えるし、やっぱり楽しくて。好きだった気持ちが再燃して、最近は休日によく出掛けていますね。

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